先日NHKの「クローズアップ現代」で知った原野亀三郎さん。日本一周のため自転車で1年2ヶ月かけて走ってきて、うしろから来たダンプカーにはねられ亡くなられました。事故に遭ったのはゴールとなる自宅まで、直線距離であと20キロ余りの地点だったそうです。
あと少し、もうほんの少しで帰り着けたのに——そう思うと、胸が締め付けられます。
原野さんは、戦時中に軍に召集され、自身は生き還ったものの、戦場で多くの戦友を失ったそうです。
戦争を生き延びた人が背負うものは、安堵だけではありません。「なぜ自分だけが」という問いは、生涯にわたって心に住み続けることがあります。原野さんにとって、自転車による日本一周という挑戦は、もしかしたらそうした思いを抱えながらも「精一杯生きる」ことへの、一つの答えだったのかもしれません。
番組の中で、原野さんはこんな言葉を残されていました。
「人生は常に挑戦の姿勢で生きることだと信じています。楽しく生きてゆくにも喜びに生きていくにも、考え一つで変わってきます。一歩前に進む勇気を持てば、おのずと変わってくるのではないでしょうか」
この言葉には、戦場という極限の場所をくぐり抜けてきた人だけが持てる、静かな重みがあります。「楽しく」「喜びに」という言葉が、苦しみを知らない人の軽やかさではなく、苦しみを知り尽くした人の覚悟として響いてくるのです。
「考え一つで変わってくる」——頭ではわかっていても、なかなかできないことです。でも原野さんは、それを言葉ではなく、70代・80代になってもなお自転車で日本中を走り続けるという行動で示されていました。
うーん、重い。
「挑戦」という言葉は、若者だけのものではないのだと改めて思います。年齢を重ねてもなお前を向き、一歩を踏み出し続けた原野さんの姿は、どこか眩しくて、そして切ない。
私も悔いの残らないように、今日という1日を精一杯生きたいと思いました。ゴールまであと20キロ——その言葉が、しばらく頭から離れそうにありません。