走ることをやめなくていい|怪我と腎症を経て見つけた長く走り続けるコツ

走ることをやめなくていい

私の趣味はランニングです。

しかし2023年5月、熊本県阿蘇で行われたASOボルケーノトレイルで転倒し、怪我を負ってしまいました。それまではフランスのUTMB(トレイルランニングの100マイルレース)を目標に頑張ってきたのですが、コロナなどいろいろあって、以前のような情熱が持てなくなっていました。その経緯はこちらの記事に詳しく書いたので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

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まさかの半月板損傷

大会後、左膝の腫れと痛みが中々引かないので病院で診てもらうと、半月板損傷というまさかの診断でした。しかも私はO脚のため、手術するなら膝下のアライメント矯正の骨切りに加えて半月板の縫合という、元の生活に戻るには難易度の高い手術が必要とのこと。松葉杖なしで歩けるまで約3ヶ月、走れるまで約7ヶ月かかると言われました。

「私の脚なんてそんな上等なものじゃないので、そこまでの手術は必要ありません」とドクターに伝えると、こんな答えが返ってきました。

「今はいいけれど、損傷した半月板が膝の動きを妨げて軟骨にダメージを与えるようになる。そうなると歩くこともままならなくなるよ」

膝の水を抜いたあとは調子が良く、軽いジョギングもできていたので、思い切って聞いてみました。

「先生、この状態で走ってもいいですか?」 「いいよ。でも軟骨までやっちゃったら大変だけどね」

「半月板の縫合だけでO脚は治らないんですか?」 「治らないよ」

O脚のままだと内側に体重がかかり、半月板を縫合してもすぐ再発するのだとか。「半月板って骨みたいにくっつかないんですか?」と聞くと、「血液が通っていないからくっつかないよ」と、終始あっさりした塩対応でした。

やり取りを重ねるうちに、正直なところ「この先生は治す気がないのかもしれないな」と感じるようになっていました。特に、半月板の縫合に加えて骨を切ってO脚を矯正するという話には、素人ながらどうしても違和感がありました。そこまで大がかりなことをする必要が本当にあるのか、どうしても信用しきれなかったのです。あくまで私個人の感じ方ですが、納得できないまま体にメスを入れる決心はつきませんでした。

そんなこんなで、一旦保留して通院をやめたのでした。

ここから考え方が変わった

この経験から、ランニングへの考え方や取り組み方が大きく変わりました。そしてこの気づきは、他の人にも役立つのではないかと思い、この記事を書くことにしました。

これまで私は「より長く、より強く」しか考えずにトレーニングしてきました。UTMBを完走することだけを目標にしていたからです。練習では24時間一睡もせず動き続けることもありました。そのためのハードワークに耐える筋力と心肺力は鍛えられましたが、その裏で体のメンテナンスを怠ってきたツケが、今回の結果として現れたのだと思います。

ここで大切なことに気づきました。体はどこかを鍛えると、全体が均等に強くなるのではなく、押す側・引く側のように片面だけが硬くなるのです。これを放っておくと、前屈みや反り返った姿勢で固定されるようになり、さらに放置すると骨まで変形してしまいます。これを防ぐには、固まった筋肉を緩めて本来の姿勢にリセットしてあげる必要があります。

市民ランナーの多くは筋肉を強くするトレーニングはしますが、その後に緩めてリセットするところまでできている人は非常に少ないと思います。

負荷とリセットを1セットで考える

考え方はシンプルです。

筋肉に負荷をかければ必ず硬くなる。だから緩めるマッサージを。心肺に負荷をかけたら、休んで心身をリラックスさせる。長時間運動をすれば乳酸が溜まって疲労につながるので、マッサージや休息、お風呂で血流を良くして疲労を取り除く。

この「負荷」と「リセット」を1セットとしてトレーニングと考えないと、いずれ怪我をして取り返しのつかないことになりかねません。

仲間と山で思いっきり練習して、温泉に入って居酒屋で打ち上げ——最高のパターンですが、疲れ切った体にアルコールを入れると肝臓に相当な負担がかかります。

筋肉が硬いままリリースする間もなく翌日の練習をこなすと、疲労がどんどん積み重なっていく。気づけば腸脛靭帯を痛めたり、踵や足裏が痛くなったりして、走ること自体ができなくなる。

本来楽しかったはずの走ることが、やりすぎたせいで走れなくなる。これは本当にもったいないことだと思うんです。

走ることをやめなくていい

私はリカバリーを怠ったことやIgA腎症を患ったこともあって、以前のような長距離のトレイルランニングはできなくなりました。でも、自分の体のことを知れば、まったく楽しめなくなるわけではありません。

腎臓に負担をかけられないなら、大量に汗をかかないペースや涼しい時間帯を選んで走ればいい。走る距離も短くすれば負担を減らすことができます。つまり走ることをやめなくていいのです。

脚のどこかが痛かったら、無理せず痛みが引くまで休む。痛みには必ず原因があります。炎症なら鎮めれば痛みは消えますし、なぜ炎症が起きたのか、フォームなのか道具なのかを探っていけばいい。フォームはスマホで友人に撮影してもらうとよくわかります。前方と横、向きを変えて撮ると、きっと想像とは違う走り方をしている自分に気づくはずです。

休んでいるときも、ただ休むだけでなく、自転車やエアロバイク、水泳など痛みのある部位に荷重をかけない運動はできます。

病院に行くのは大切ですが、湿布と痛み止めだけでは、また同じ運動量をしたときに痛みが再発する可能性があります。病院に頼りつつ、自分で自分の体を知ることにこそ、もっと大きな意味があると思います。

そして、今

通院をやめてから、自分の体と向き合いながら色々と試してきました。固まった筋肉を緩め、痛みが出たら無理せず休み、フォームを見直し、負荷とリセットをセットで考える。地道な取り組みでしたが、その結果、今では膝の痛みもなく、水も溜まらなくなりました。あれだけできなかった正座もできるようになり、ランニングも再開できています。

もちろん、これはあくまで私のケースです。同じ怪我でも人によって最適な選択は違いますし、手術が必要な人もいるでしょう。ただ、医師に勧められるまま進める前に、一度立ち止まって自分の体と向き合ってみることにも、大きな意味があると私は実感しました。


運動を続けていると、もっと速く、もっと強くと負荷をかけたくなるものです。そうすると必ずどこかに無理が生じて痛みが出る。

つまり、スポーツをする限り痛みは完全にはなくならないのです。だからこそ無理をするのではなく、長く続けるためのきっかけとして痛みと付き合っていく。それが、走ることを一生楽しむためのコツなのだと思います。

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この記事を書いた人

30代で独立、妻への腎移植、自身もIgA腎症に。トレラン大好きだった自営業者です。病気やお金の不安があっても生活は続く。夫婦で60代を迎えるにあたり、福岡で小さな畑を耕し半自給自足の丁寧な暮らしへ。「急がない。でも、やめない。」をモットーに好きなことをぼつぼつ。ブログと音声配信もやってます。

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