食卓から変わる50代からの暮らし。妻の病をきっかけに始めた「手作り味噌」と、50人が集まる“味噌部”の輪

味噌部の風景
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私たちの「手しごと」の原点

私たちは夫婦で味噌を作っています。いわゆる手前味噌というやつです。それが今では50人ほどが集まる「味噌部」という大人の部活動に育ち、活動は10年を超えました。

そもそも、なぜ私たちがこれほど「手しごと」にのめり込むようになったのか。
きっかけは、妻の腎臓病でした。

50代に入り、コロナ禍、私から妻への腎移植、そして私自身もIgA腎症(慢性腎臓病)という病気の発症……。夫婦揃って決して健康体とは言えなくなった私たちが、食の安全と向き合い、絶望を「これからの楽しさ」に変えていった、10年の手しごとの記録をお話しします。

10年つづけて分かった、手作り味噌の「本当の美味しさ」

皆さんはお味噌ってどうやってできているのか知っていますか。
材料は大豆、麹、塩。たったこれだけなんですよ。
これらを混ぜ合わせて発酵させるだけ。
至ってシンプルなものなんですが、麹菌が大豆のタンパク質を発酵の力でアミノ酸に変化させていき、お味噌の旨みを作っていきます。
そして作る人の手についている常在菌も加わることで、その人でしかできない「手前味噌」ができるというわけです。

常温に置いておけば発酵が進んでいき、どんどん深みのある味に変化していきます。そのため常温に置いていても腐ることがありません。

仕込んでおおよそ3ヶ月ほどで完成です。その時の味は割合あっさりとした感じです。そのまま置いておけば熟成が進んでいき色も濃い茶色に変化していきます。

お味噌ってすごいです。

どんな材料とでも相性がよく、和洋問わず味の相性も抜群です。お味噌汁ひとつであらゆる具材の栄養と旨みを一つの椀でとることができます。

お味噌汁だけでなく炒め物の調味料として使ってもいいし、隠し味として使っても独特の風味が感じられます。

自分たちで作ってみて初めて分かったことですが、お味噌って人が健康でいるために、とても有効な食べ物なんだということがわかりました。
そして昔から日本にある発酵食で、日本にある食材との相性もよく、腸内環境を整えるのにもおすすめです。

減塩を気にしている人なら、具材を多く入れ食材からの出汁を引き出したり、または、いりこやカツオなどの出汁を効かせてみる。
そうすることで使う味噌の量を減らすことができます。
そういった美味しい発見を積み重ねながら、私たちは手前味噌の「本当の美味しさ」を理解するようになっていきました。

手間暇かけた本当の美味しさ

気がつけば50人の輪に。大人の部活動「味噌部」の話

最初は私たちだけで作っていた手前味噌。それが今では50人ほどの味噌作りグループになり、活動も10年を超えました。

今ではグループのことを「味噌部」と呼び、参加される方のことを「部員」と呼んでいます。
きっかけは手作り味噌があまりに美味しかったので、仲の良い友人を誘って作ってみたところ、友人も気に入って他にも誘ってもいい?という感じの連鎖でグループの輪が広がっていきました。

ただ、ひとつルールにしているのが、必ず紹介制にしているということ。必ず部員さんの紹介で最初は一緒に参加してもらうようにしています。
少し面倒なようですが、良い関係を長く続けていきたいとの思いで、今はこのような活動スタイルとさせていただいています

そうして10年以上やっているといろんなことがあって、中でもある部員さんのお子さんが、手前味噌を切らしてしまいお味噌を市販のものに変えたところ、
「これじゃない。これはおいしくない」と言って手作り味噌以外を食べなくなったのだそうです。

その話を聞いてすごく嬉しくなりました。私たちの活動が根付いて、皆さんのご家族の健康や食卓をほんの少しだけれど支えている。そう考えるととてもやりがいも感じるのです。

味噌だけじゃない、暮らしを彩る手しごとたち

こんな私たちですから、お味噌だけにとどまらず他にも作れるものは手作りしています。
今では、ソーセージ、ベーコン、キムチ、ジャム、梅干しなどなど。作れそうと思ったことはとりあえず試しています。

特にソーセージには強い思い出があります。
市販のソーセージに入っている添加物(増粘剤など)が腎臓に負担をかけてしまうため、それまで大好きだったのに、妻は我慢しなければならなくなりました。

目の前で大好きなものが消えていく妻を見て、なんだか可哀想で切ない気持ちになりました。

そんな時、妻が「だったら、自分で(添加物のないものを)作っちゃえば良いんじゃない?」と言い出したのです。

実際に作ってみると、思ったほど難しくもなく、その上信じられないほど美味しい。

それ以来、我が家では定期的にソーセージを手作りして、冷凍保存して必要な時に解凍して食べるようになりました。
こんな調子でお金で買えば簡単に買えるものを、自分たちで手作りするようになって、材料のことや、塩の種類、製造過程のことがわかるようになりました。

また食品添加物のことについても多少なりとも理解できるようになったのも手作りをしたからだと思います。

今年は初めて白菜から全部手作りでキムチを作りました。

完成した時本当に嬉しかったのを覚えています。

これまではヤンニョムは自家製で作り、白菜と大根を買ってきて作っていましたが、今年は大根も白菜も自分で栽培することができました。

特に白菜は何度も上手に巻かずに失敗していたので嬉しさもひとしおでした。(詳しくは前回の白菜の記事へ)

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全部じゃなくていい。ひとつの「手しごと」から始まる豊かな老後

妻の病気をきっかけに「食の安全」という観点から手作りを始め、かれこれ10年の時が経ちました。

最初は健康でいるためだったのが、美味しさに気づいたり仲間を作ることができました。

50代にはコロナを経験したり、私から妻への腎移植、そして私自身もIGA腎症という病気になり目まぐるしく時が過ぎてゆきました。

夫婦揃って全くの健康体ではなくなりましたが、今では野菜もある程度は自給できるようになり、充実した50代最後を迎えれそうです。

これからの老後も忙しく、そして仲間とともにまだまだ手作りした美味しい食材を作りながら、手仕事を通じて人とつながっていけそうな気がしています。

妻の病気から始まったこんな不思議な体験が誰かの役に立てれば良いなと今では思っています。
私たちも最初からなんでも作っていたわけではありません。
でも興味を持って楽しみながらひとつずつ作れるものを増やしてきました。
百姓百作じゃないですがこれからも手作りを楽しんでいきたいと思います。

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この記事を書いた人

30代で独立、妻への腎移植、自身もIgA腎症に。トレラン大好きだった自営業者です。病気やお金の不安があっても生活は続く。夫婦で60代を迎えるにあたり、福岡で小さな畑を耕し半自給自足の丁寧な暮らしへ。「急がない。でも、やめない。」をモットーに好きなことをぼつぼつ。ブログと音声配信もやってます。

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