— 忙しさの中でも、自分の人生を育てていく —
商売というのは本当に浮き沈みがあるものです。
売上が良いときもあれば、少しお金が残ったと思った矢先に支払いが続き、不安が押し寄せてくる──そんなことの繰り返しです。
「使えるお金」と「使ってはいけないお金」をきちんと分けていても、やむを得ず“使ってはいけない方”に手をつける場面も出てきます。
将来のためにとっておいた資金に手を出すとき、心の中に静かに広がっていく不安。それでも、前に進むには行動しかないと感じています。
“自分の仕事”を育てる決意
そんな不安を繰り返さないために、昨年私は新たな一歩を踏み出しました。
それが、「確実に現金収入になる、自分のなりわいを育てる」こと。
元々、パソコンやネットワーク関連、Webサイト制作などを主な仕事にしてきましたが、これから先も同じように働き続けられるのか、少しずつ不安が募るようになっていました。
そんな中、「食」に関わるお客様との出会いから自分でも野菜を育てるようになり、それがきっかけで「自分で加工・販売できる商品づくり」を考えるようになりました。
そして昨年、ついに念願の小さな加工場を作りました。
今年はそこから、地元産のみかんを使ったオリジナルジャムや、減農薬で育てた大根・白菜の漬物を商品化し、販売を始めています。
自分の手で育て、加工し、売る。
お金の金額以上に、自分の行動が誰かに届いたという実感は、何にも代えがたいものです。
計画通りにいかない現実と、迷いの中で
ただし、現実は思い描いた通りには進みません。
通常の仕事が忙しくなったり、野菜の収穫の端境期にあたってしまったりして、加工品づくりが後回しになってしまうこともありました。
「また同じ失敗を繰り返してしまうのでは?」
「本当にこの方向でいいのだろうか?」
そんな不安や迷いは何度も頭をよぎります。
それでも、「未来を変えるには、自分が動くしかない」という信念があるから、なんとか踏ん張れています。
続けるための工夫と仕組みづくり
これまでの経験から学んだのは、「時間がないなりのやり方を工夫する」ことが必要だということです。
- 冷凍保存や下処理を事前に行い、作業を分散させる
- 一人で抱え込まず、信頼できる外部パートナーと連携する
- 小ロットでテスト販売し、販売しながら改善する
「すぐに完璧」は求めず、今できる形で続けていく。
そのための“仕組み化”を少しずつ整えていくことが大切だと感じています。
“適正価格”で売るという挑戦
販売についても、多くの学びがありました。
現在は道の駅に出品していますが、そこで感じたのは「価格の壁」です。
高齢の出荷者が多く、生活のためというより趣味や交流の延長で出している方も多いため、販売価格が全体的に安くなりがちです。
そこに「原材料や手間にこだわった商品」を並べると、どうしても割高に見えてしまうのです。
そのため、これからは自分の言葉で商品の魅力を伝えられる直販の仕組みを強化していこうと考えています。
現在はInstagramを活用し、商品づくりへのこだわりや野菜作りのストーリー、パッケージに込めた想いなどを発信中。今後はネットショップを立ち上げ、予約販売を通じて在庫リスクを減らしつつ、共感してくれる人とつながれる仕組みを作っていきます。
忙しさの中で心を整える
正直なところ、今も「やることが多すぎる」と感じることはたくさんあります。
でも、自分の手で少しずつ育てている“なりわい”があることで、気持ちが折れそうなときも前を向くことができます。
小さくても、自分で生み出したもので得たお金は、心の支えになる。
それは単なる収入ではなく、「これからの自分の生き方を形にしている」という実感をくれるからです。
これからの10年をどう生きるか
50代は、「まだできる」と思える年代であると同時に、「今のままではいられない」と感じる時期でもあります。
目に見えない変化がじわじわと訪れ、気づいたときには体力も環境も変わっている。そんな時期だからこそ、“今から何を始めるか”がとても大事だと思います。
10年後も笑っていられるように、今はその準備のときだと信じたい。
焦らず、自分のペースで、小さくても確かな一歩を重ねていきたい。
そして、その道の先に、自分らしい生き方と、穏やかな日常があることを信じていたいと思っています。
さいごに
「なりわい」とは、単なる収入手段ではなく、自分らしく生きていくための土台です。
お金との向き合い方、時間の使い方、人とのつながり。
それらを見直しながら、自分の手で作っていく人生は、きっと心豊かなものになるはず。
そのスタートは「今」ですし、今やっていることがこれからの未来を作るのだと思います。