Tete de la Troncheからの絶景
最初のピーク、Tete de la Tronche(2,584m)を越えてARNOUVAZへと向かう区間の眺望は、もう素晴らしいの一言でした。まさにアルプスの少女ハイジの世界です。
山があまりにも大きくて、距離感がまったくつかめなくなりました。奥行きを感じる前に目に入ってくる景色の壮大さに、ただ圧倒されるばかりでした。
BONATTI小屋までは比較的平坦なコースで快調に走れましたが、ひとつ気になったのが山道の轍の深さです。轍に入らないよう避けながら走ろうとしても、他のランナーがいたり道脇のブッシュが固くて、思ったよりパスするポイントが少なかったです。山が大きいから走れる場所も広いだろうと思いきや、そうでもありませんでした。


ARNOUVAZでのサプライズ
ペースも安定してきて、前後を走るランナーもだいぶ顔なじみになってきた頃のことです。
ARNOUVAZエイド手前で、前を走っていた赤いシャツの方がいきなり振り返り、ドライマンゴーのようなフルーツをこちらに差し出しました。「サンキュー」と言って口に入れると、めちゃくちゃ美味しい。思わず「デリシャス!!」と叫ぶと、その方はニヤリと振り返り拳を向けてきました。慌てて拳を合わせると、英語で「俺が作ったんだ」というようなことを言っていたようです。
言葉は通じなくても、思いは通じる。きっと世界の共通言語は英語じゃなくて、ドライマンゴーなのかもしれません。
そしてもうひとつサプライズがありました。サポートはCHAMPEX-LAC1ヶ所の予定だったのですが、奥さんが頑張ってARNOUVAZまで来てくれていたのです。
エイドでサラミとチーズのサンドイッチをスープに浸して食べ、ハイドレーションに水を補給してテントを出ると、奥さんの顔が見えました。家族と会って話すだけで、こんなに元気が出るものなのかと改めて実感しました。無理して来てくれてありがとう。次のサポートポイントであるCHAMPEX-LACまで、また頑張ります。


補給について思ったこと
この辺りですでにジェルを受け付けなくなっていました。15個持っていったジェルのうち食べたのは結局4個だけ。残りはずっとザックの重りとして運び続けることになりました(完全にアホです)。
補給にはいろんな考え方があってそれぞれを尊重しますが、私は固形物の方が合っているようです。ジェルはコンパクトで高カロリー、必要な栄養素を素早く摂れる優れたアイテムですが、だからといって「トレランの補給=ジェル一択」ではないと思います。特に経験の少ないランナーは決めつけずに、いろいろ試してみるといいのではないでしょうか。ただし、レース本番でいきなり試すのは禁物です。
私は細く棒状にした海苔巻きを奥さんに作ってもらっていましたが、一口サイズにしたり中身を工夫すればカロリーも携帯性もある程度高められます。自分に合ったものを探すのも、トレランの楽しみのひとつだと思います。


Grand Col FerretからCHAMPEX-LACへ

ARNOUVAZからはGrand Col Ferret(2,537m)まで一気に登ります。この辺りから天気が怪しくなり気温も下がってきました。途中、荷物を運ぶロバに道を塞がれたりもしましたが、それもまた楽しい経験でした。


到着したGrand Col Ferret。山頂は真っ白。霧に包まれた幻想的な景色でしたが、寒さもかなり本格的になってきました。
私のSUUNTOちゃんでの標高は2554m。およそ実測と17m差ですがあまり気にならないですね(^_^;)
逆に結構正確なんだな〜くらいに思っていました。
ここからおよそ11kmの下りです。経験者から「下りで足を使い果たすな」と言われていたので、ペースを守って慎重に下りました。

長い下りの中間地点あたりにあるLA FOULYエイドに到着。下りのペースは順調だったので遅れはないと思い込んでいましたが、気温が下がっていたこともあり、ここで座ってしっかり食べることにしました。
実際の到着時刻はスタートの30分遅れを加算するとほぼ予定通りでした。しかしこの時、その30分の遅れを頭に入れていませんでした。そしてエイドを出たのが18時54分、なんと20分も滞在してしまい、合計で予定より50分の遅れとなっていました。ライトを装着したり、レインウェアを着るかどうか迷ったりしてモタモタしてしまったのも原因です。
LA FOULYを出るとしばらくロードが続き、雨も降り出しました。暗くなるにつれてカメラを出す気力もなくなっていきました。途中、Praz de Fortと書かれた先の集落の景色が日本の田園風景にそっくりで、絵本から出てきたような家々が並んでいました。写真を撮っておけばよかったと今でも後悔しています。
集落を抜けて下りきったところから、CHAMPEX-LACへの上りが始まります。「少し」と聞いていたのに中々きつく、日もどっぷり暮れた暗闇の中でかなり消耗してしまいました。

サポートの移動について
ここで奥さん側の話も少し紹介します。

ARNOUVAZからCHAMPEX-LACへの移動は直行できません。一旦シャモニーまで戻り、バスを乗り換えてオルシエールへ、そこからさらにCHAMPEX-LACへと向かう必要があります。
この移動中に渋滞が発生し、シャモニー発18時の最終バスに乗れないかもという事態になったそうです。これに乗れなければサポート終了。なんとか間に合ってくれて本当によかったです。



サポーターはエイドエリアに入れる入場券が必要で、しかもランナーの到着10分前にならないと入場できません。それまでの待機時間には暖かいウェイティングエリアと飲み物が用意されていたそうです。こういったランナー以外へのホスピタリティは本当に嬉しいですね。
CHAMPEX-LAC エイドにて
CHAMPEX-LACエイドはホットミールとサポーターエリアが用意されていて、本当に快適でした。
到着した時点で1時間16分の遅れ。かなり消耗していたので、まず着替えることにしました。最初はミッドレイヤーだけ変えようと思っていたのですが、奥さんに勧められてすべて着替えました。これが後になって本当によかったと思います。どんな天候予報でもあらゆる状況に備えて準備しておくことの大切さを、改めて実感しました。
温かい食事を済ませてゆっくり休む計画でしたが、寒さで体が動かず思った以上に時間をロスしてしまいました。エイドでの休憩はなんと1時間8分。この時点ではまだ余裕があると思っていたのですが——このあとが大慌てとなります。それは次回のゴール編でお伝えします。



いよいよシャモニーで感動のゴール編です

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